遺言執行者は指定しなくても大丈夫?-具体例で検討

 遺言書を作成する際、遺言執行者によらなければ執行できない遺言事項(①認知②推定相続人の廃除及びその取消し③一般財団法人の設立)がないのなら、遺言執行者を指定しなくてもよいのでは、と聞かれることがあります。果たしてそう言い切れるでしょうか?
 以下では、この点について具体的に検討していきたいと思います。
 なお、遺言執行者の役割については、こちらをご覧ください。⇒「遺言執行者とは」

【不動産の相続登記】

 特定財産承継遺言であれば、その不動産を取得する相続人が単独で登記申請できます。遺贈の場合は、受遺者が相続人である場合を除き、相続人全員または遺言執行者との共同申請が必要です。内縁の妻や孫への遺贈、遺贈寄付などの場合です。内縁の妻のケースで、調停をすれば相続登記できるですが、費用と時間の問題から相続人にハンコ代を支払って手を打った、という話をよく聞きます。

【預貯金の解約・払戻し】

 公正証書遺言または検認済みの自筆証書遺言があれば、当該財産を承継する相続人が単独で手続き可能な金融機関が多いです。ただし、金融機関によっては所定の用紙に相続人全員の署名・押印を求めたり、遺言執行者の関与を求める場合もあるため、事前確認が重要です 。

【証券会社に預けた株式・投資信託の名義変更】

 こちらも、公正証書遺言または検認済みの自筆証書遺言があれば、当該財産を承継する相続人が単独で名義変更可能なケースが多いです。ただし、証券会社によっては所定の用紙に相続人全員の署名・押印を求めたり、遺言執行者の関与を求める場合もあるため、事前確認が重要です 。

【時間と労力】

 上記のように単独で相続手続きができる場合であっても、相続手続きのため勤務先を休んで金融機関等に赴き、長時間掛けて相続手続きをしなければならないことも多く、時間と労力を費やすケースがあります。高齢の相続人は体力的にきついこともあるでしょう。
 こうした事情から、遺言執行者によらなければ執行できない遺言事項がなくても遺言執行者を指定することにメリットはあります。ただし、専門家に遺言執行者を依頼する場合は有償となりますので、事前に費用を確認することが大切です。

【遺言執行者の義務】

 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法第1007条2項)。また、遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人(遺留分のない相続人を含みます)に交付しなけれならない(民法第1011条1項)こととなっています。特に専門家でない親族などが遺言執行者となった場合は、忘れないでください。

 遺言書を作成する際には、推定相続人の確認、財産配分、遺留分予備的遺言、執行のしやすさ、相続税等確認・検討すべき事項が多数あります。行政書士等の専門家に是非ご相談ください。
 ⇒お問い合わせ

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