遺贈と特定財産承継遺言の違いを教えてください。

遺贈とは、遺言によって自らの財産を無償で他人に与えることです。特定財産承継遺言は、「甲不動産を長男Aに相続させる」という具合に遺産分割方法を指定するものです。よく似ていますが、次の4つの違いがあります。
《包括遺贈と特定遺贈》
4つの相違点に入る前に、包括遺贈と特定遺贈について確認しておきます。
遺贈には、財産全部または一定割合を与えるという包括遺贈と、特定の財産を与える特定遺贈があります。包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することになるため、債務も承継します。
《遺贈と特定財産承継遺言の相違点》
(1)財産承継の相手
遺贈は相手が相続人である必要はありませんが(例:孫、財団への遺贈寄付)、特定財産承継遺言は共同相続人間での遺産分割を前提としているため、相手は相続人に限られます。遺言で相続人へ財産承継するときは、現在ではほとんどが「相続させる」、つまり特定財産承継遺言となっているようです。
(2)財産の取捨選択の可否
特定遺贈は、欲しくない財産については放棄できますが、特定財産承継遺言では相続そのものを放棄しない限り放棄できません。ちなみに配偶者居住権は、特定財産承継遺言ではなく、特定遺贈により付与することになっています。
(3)不動産登記
[原則]
登記手続は、遺贈なら登記義務者たる相続人との共同申請となりますが、特定財産承継遺言なら受益相続人の単独申請となります。
[受遺者が相続人の場合]
遺贈であっても、受遺者が相続人の場合は、令和5年4月1日より受遺者が単独申請できるようになりました。
(4)不動産登記の登録免許税
[原則]
登録免許税は、遺贈なら固定資産税評価額の2%ですが、特定財産承継遺言なら0.4%です。
[受遺者が相続人の場合]
遺贈であっても、受遺者が相続人の場合は、固定資産税評価額の0.4%です。
以上、ご参考になれば幸いです。