遺言執行者の役割について教えてください。

《遺言執行者とは》

 遺言執行者とは、遺言の内容の実現に必要な行為を行うため、遺言により指定され、または家庭裁判所により選任された者をいいます。民法には、「遺言執行者は遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定められています。遺言執行者は、特定の相続人や受遺者の側に立つことなく、遺言者の意思を実現することが使命です。

《執行を要する遺言事項と執行を要しない遺言事項》

 遺言事項には、執行を要する事項と要しない事項があります。前者には、さらに遺言者執行者が必須の事項と必須ではない事項があります。

<執行を要する遺言事項>
 遺言執行を要する遺言事項には、遺言執行者でなければ執行できない事項(必須)と遺言執行者がいなくとも執行できる事項(必須ではない)があります。

1.遺言執行者でなければ執行できない遺言事項
 次の遺言事項は、遺言執行者によらなければ執行できません。
①認知(生前のみならず、遺言でも認知ができます)
②推定相続人の廃除及びその取消し
③一般財団法人の設立

2.遺言執行者がいなくても執行できますが、いる場合は遺言執行者が執行すべき事項
①遺贈
特定財産承継遺言
③信託
④生命保険・傷害疾病定額保険の保険金受取人の変更
 上記は、遺言執行者がいなくとも執行できるとはいえ、スムーズで確実な遺言内容実現のため、是非指定しておきたい事項ともいえます。(相続登記、預貯金の解約・払戻し、株式の名義変更など)
【相続人以外への遺贈登記】
 相続人以外へ不動産を遺贈する場合、受遺者を登記権利者、遺言執行者または相続人全員を登記義務者とする共同申請となりますので、必須ではないにせよ遺言執行者を指定する必要性が高いといえます。

<執行を要しない遺言事項>
 以下の遺言事項は、その性質上、執行を要しません。
①未成年後見人・未成年後見監督人の指定
②相続分の指定または指定の委託
③遺産分割方法の指定または指定の委託(ただし、特定財産承継遺言は執行が必要です)
④遺産分割の禁止
⑤相続人相互間の担保責任の指定
ほか4つ

《遺言執行者の指定・選任》

 遺言執行者は、以下のように指定または選任されます。相続人でも構いません。
1.遺言による指定
 専門家に遺言書原案の作成を依頼した場合は、まず遺言で指定します。
2.家庭裁判所による選任
 遺言執行者がないとき、またはなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により遺言執行者を選任することができます。

《まとめ》

 上記の通り、執行を要しない遺言事項のみの場合はともかく、遺言執行者がいなくとも執行できる遺言事項のある遺言についても、遺言者の意思のスムーズかつ確実な実現のため、遺言で遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。

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