デジタル遺言(案)-全文等の口述を録音等により記録して遺言する方式

前回のブログで、現在検討されているデジタル技術を活用した新たな遺言方式の3つの案の概要についてご紹介しました。これ以降は、3つの案を詳しく取り上げてご紹介いたします。今回は、その一つ目です。
【遺言の全文等を電磁的記録により作成し、遺言者による全文等の口述を録音等により記録して遺言する方式 】
これには、証人の立会いを要件とする案と要件としない案の2つがあります。
《証人の立会いを要件とする案》
この案の場合、次に掲げる方式に従わなければならないものとされています。
<1>遺言者が、電磁的記録に遺言の全文、日付、自己の氏名及び証人の氏名その他証人を特定するに足りる事項を記録すること(注1)(注2)。
<2> 遺言者が、証人二人以上の前で、上記<1>の電磁的記録が自己の遺言に係るものである旨、記録されている全文(財産目録(上記<1>の電磁的記録に一体のものとして記録された相続財産の全部又は一部の目録をいう。以下同じ。)を除く。)、日付及び自己の氏名を口述すること(注3)(注4)(注5)(注6)。
<3> 証人が、遺言者に対し、上記<1>の電磁的記録に記録された内容が<2>の口述の内容と符合することを承認した後、記録されている自己の氏名その他証人を特定するに足りる事項を口述すること。
<4>上記<2>及び<3>の口述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により電磁的記録に記録すること(注7)(注8)。
(注1)遺言者の指示を受けた者が<1>の遺言の全文、日付、遺言者の氏名及び 証人の氏名その他証人を特定するに足りる事項を記録することも許容されることを前提としています。撮影スタッフのことをいっているようです。
(注2)上記<1>の電磁的記録に、遺言者が電子署名を行うものとすることも考えられるとしています。
(注3)証人となることができる者の資格について、証人の欠格事由を定める現行の規定(民法第974条)が適用されることを想定していますが、この方式における証人の役割等に照らし、更なる資格の制限が必要かについて引き続き検討するとしています。
(注4)「遺言の全文」に代えて、「遺言の趣旨」を口述するものとすることについて引き続き検討するとしています。
(注5)遺言者又は証人が口がきけない者であるとき又は耳が聞こえない者であるときは、通訳人の通訳により申述すること又は遺言者若しくは証人が入力する文字情報を電子計算機を用いて同時に音声に変換することにより、口述に代えるものとするとの規律を設けることを想定していますが、その具体的規律は引き続き検討するとしています。
(注6)証人が、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法(以下「ウェブ会議の方法」という。)により立ち会うことができるものとすることについて引き続き検討するとしています。
(注7)上記<4>の電磁的記録が<1>の電磁的記録に関するものであることを明らかにするため、これらを一体のものとすることなどを含め、どのような措置をとることが必要かについて、引き続き検討するとしています。また、上記<1>及び<4>の電磁的記録について、事後的な改変を防止するため、電子署名のほかに、どのような措置をとることが必要かについて、引き続き検討するとしています。
(注8)遺言書の検認の規定(民法第1004条)はこの方式によってされた遺言にも適用するものとし、家庭裁判所において、検認時における遺言の状態を保全し偽造、変造、隠匿等を予防する目的で、上記<1>から<4>までに規定する方式に関する事項を見分することを想定していますが、現行の検認手続の枠組みの中で、検認の結果を踏まえて遺言執行を受ける金融機関、法務局等において方式要件の充足性を判断することができるか否か等について、引き続き検討するとしています。
《証人の立会いを不要とし、これに相当する措置を講ずる案 》
この案では、次に掲げる方式に従わなければならないものとされています。この案にも、多くの注意書きが付されていますが、割愛させて頂きます。
<1> 遺言者が、電磁的記録に遺言の全文、日付及び自己の氏名を記録し、電子署名を行うこと。
<2> 遺言者が、上記<1>の電磁的記録に記録されている遺言の全文(財産目録を除く。)、日付及び自己の氏名を口述すること。
<3>上記<2>の口述【及びその状況】を録音【及び録画を同時に行う方法】により電磁的記録に記録すること。
<4> 上記<3>の記録をするに当たっては、遺言者の周囲に遺言者以外の者が立ち会わない状況の下においてされたことを明らかにするとともに、遺言者以外の者が上記<2>に定める口述をすることができないようにする措置をとること。
注意書きとして、細かな検討事項が多数記載されているのは、デジタル技術を活用した遺言は便利な反面、遺言執行時のデジタル遺言の取扱いや本人確認、遺言者の遺言能力、遺言者の真意に基づく遺言か(他人に圧力をかけられていないか)等をどのように担保していくかが重要な課題だからです。
今回紹介した案では、遺言の様子を録音(録画)するため、上記課題(遺言執行時の事務を除く)の解決に資するように思いますが、遺言情報そのものの電磁的記録と録音(録画)した内容の電磁的記録が厳重に保管され、遺言者の死後、相続人等が確認できないと始まりません。
自筆証書遺言や公正証書遺言など現行の遺言方式においても厳格な要件が法定されています。不備のない確実な遺言、安心・安全な遺言は、行政書士などの専門家に是非ご相談ください。
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