成年後見制度はどう変わる?-「民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案」

【はじめに】
成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などにより物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者(「成年後見人」等)を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。しかし、成年後見制度は従来よりさまざまな課題が指摘され、利用が進んでいないため、数年前から制度の改正が議論されてきました。 そして、法制審議会民法(成年後見等関係)部会第33回(令和8年1月27日開催)において、「民法(成年後見等関係)等の改正に関する要綱案」が取りまとめられました。
今回は、今後成年後見制度がどう変わるのかについて、ポイントを解説します。
【現行制度の課題】
現行の成年後見制度、特に法定後見制度には人権保障上の問題や制度の利用が進まない理由として、次のような課題が指摘されていました。
<1>利用動機の課題(例えば、遺産分割協議、自宅の売却など)が解決しても、本人の判断能力が回復しない限り利用をやめることができない。事実上、本人が死亡するまで報酬が永続的に発生する。
<2>成年後見人には包括的な取消権、代理権があり、本人の自己決定が必要以上に制限される場合がある。
<3>本人の状況の変化に応じた成年後見人等の交代が実現せず、本人がそのニーズに合った保護を受けることができない。例:専門職後見人から親族後見人にバトンタッチができない。
<4>任意後見契約の本人の判断能力が低下した後も適切な時機に任意後見監督人の選任申立てがされず、任意後見契約が発効しないことがある。
【改正に関する要綱案では】
改正に関する要綱案では、上記のような指摘を踏まえ、それぞれ次のような内容になっています。
<1>家庭裁判所は、必要がなくなったと認めるときは、本人、配偶者、四親等内の親族又は特定補助人若しくは補助監督人の請求により、特定補助人を付する旨の審判を取り消すことができる。
<2>現行の後見、保佐、補助の3類型を補助に一本化し、代理権、同意権は必要な事項ごとに申立ての範囲で家庭裁判所が認定する。
<3>本人の利益のために必要があるときは家庭裁判所が補助人を解任することができる。この場合の解任は欠格事由とならないため、解任された専門職後見人は業務に支障が出ない。
<4>従来の申立権者に加えて、本人が任意後見契約の際に公正証書において指定した者に申立権を認める。

【新制度利用のイメージ】
新制度の利用をイメージしてみましょう。
| 高齢夫婦、子どもの家族が近隣に在住。夫が亡くなり、遺産分割協議に際し、軽度認知症の妻のために新成年後見制度を利用し、遺産分割協議後に終了。数年後に妻の施設入居費用工面のために自宅を売却する必要が生じ、新成年後見制度を利用。自宅売却と施設入居契約を終えて終了。 |
この例は、近隣に家族がおり、本人の普段のお世話ができるケースです。身寄りがいない場合やいても支援できない場合は、遺産分割協議などの問題解決後も財産管理や身上監護(生活支援)は現行制度と同様継続的に必要です。
【新制度開始時期】
新制度開始時期は、国会審議によります。
【現行制度の利用者は】
すでに法定後見制度を利用している人も対象にするかどうかは現在検討中のようです。
高齢者の生活や終活については、成年後見制度の他に遺言、家族信託などさまざまな選択肢や情報が溢れ、中にはこれさえやっておけば安泰などと宣伝している業者もいます。どのような制度をどのように活用するのがよいかはご本人の置かれた状況やニーズにより異なります。迷ったときは、行政書士などの専門家に是非ご相談ください。
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