家族信託は目的が大事です―周辺制度との比較検討も

《不安材料は何か》
家族信託の周辺制度に遺言、法定後見、任意後見などがあります。よく「どれがよいですか」と聞かれることがありますが、それは目的によります。つまり、自分やご家族が現在あるいは将来どのような不安を抱えており、これらの制度を活用することにより、その不安を解消できるのか、あるいは、何を達成したいのかを明確にすることが大事です。
《家族信託の目的・機能》
そこで、まず、家族信託の目的や機能を列挙してみます。
1. 認知症対策
委託者の判断能力が低下した場合に、財産が凍結されるのを防ぎ、家族がスムーズに財産管理・運用を行えるようにします。
2. 相続対策
・委託者の希望に沿った財産の承継方法を指定できます。
・遺言では実現できないような、二次相続以降の承継先を指定することも可能です。
・遺産分割協議の必要がなくなり、相続人間の紛争を防止できます。
3. 障がいを持つお子様の生活保障
障がいを持つお子様の将来の生活費や医療費などを、ご自身の死後も継続的に確保できます。親(委託者)なき後の生活を、家族がサポートできるようにします。
4. 事業承継対策
・後継者にスムーズに事業を承継できます。
・経営権の分散を防ぎ、事業の安定性を維持できます。
5. 共有不動産の管理・処分
・共有不動産の管理・処分に関する意思決定をスムーズに行えるようにします。
・共有者間の意見対立による不動産の塩漬け状態を回避できます。
6. 財産管理の柔軟性
・委託者の希望に合わせて、財産管理の方法や受益者を自由に設計できます
7. 倒産隔離対策
・委託者または受託者の事業が破綻した場合でも、信託財産は保護されます。
《周辺制度の目的・機能について》
次に家族信託の周辺制度について、上記の目的や機能が備わっているか整理してみます。

上表を見ると、家族信託とその周辺制度で目的や機能が重なる部分があることが分かります。
したがって、目的に合わせて、制度を選択あるいは併用すればよいということがいえます。いずれの制度を選択あるいは併用するにせよ、制度の内容をよく研究し、理解することが大切です。不明な点は、専門家に相談されるとよいでしょう。