予備的遺言について教えてください―先を見据えた備え!

「予備的遺言」とは
予備的遺言とは、遺言者より受遺者が先に亡くなる場合に備えて、予め財産の承継者を指定しておくものです。(「先に」と書きましたが、遺言者と受遺者が同時に死亡した場合も含みます。交通事故や自然災害などで同時に死亡したようなケースが考えられます。)
《事例》
遺言者が以下のように財産を残したいケースを考えます。
自宅不動産 ⇒ 配偶者A 預貯金 ⇒ 長女B 株式 ⇒ 二女C |
例えば、上記事例で「遺言者(自分)は、自宅不動産を配偶者Aに、預貯金を長女Bに、株式を二女Cに相続させる。配偶者Aが遺言者(自分)より先に亡くなった場合は、自宅不動産は長女Bに相続させる。この場合、預貯金は(長女Bではなくて)二女Cに相続させる。」という具合です。(太字の部分が予備的遺言です)
なお、予備的遺言の後半は、長女Bと二女Cの相続財産の取り分のバランスを考えたもので、このようにしなければならない訳ではありません。
遺言者(自分)より、配偶者Aが先に亡くなった場合、予備的遺言により次の通り財産が承継されます。
自宅不動産 ⇒ 長女B 預貯金、株式 ⇒ 二女C |
もし、上記事例で予備的遺言がないと自宅不動産について、もう妻Aは亡くなっていませんので当然ながら相続人にはなりません。したがって、自宅不動産の相続については、長女Bと二女Cで遺産分割協議が必要となります。
遺言の無料相談会で、「妻Aが死亡したら遺言書を書き直せばよいので予備的遺言は必要ないのでは?」と言われたことがあります。確かに遺言書を書き直せば予備的遺言は必要ないかもしれませんが、高齢者の場合、遺言を書き直すのは億劫になりますし、結構大変です。また、遺言者が認知症になると有効な遺言はできなくなります。遺言書は元気なうちに書いておいた方がよいので、万が一の場合に備えて予備的遺言は是非検討しておきましょう。
なお、予備的遺言に関して代襲相続が絡んでくることがありますが、少し難しく長くなりますので次回に譲りたいと思います。