居住建物が子どもの所有である場合の遺言

【はじめに】

 無料相談会などでの遺言のご相談で意外と多いのが、土地は自分の所有ですが建物は子どもや娘婿の所有である場合の遺産配分についてです。元々居住していた建物が古くなり、子どもやその配偶者が住宅ローンを組んで2世帯住宅に建て替えたというケースです。
 このようなケースでは遺言者は、相続財産のうち土地は建物所有者である子供に承継させたいと希望していることが大半ですし、理に適っていると言えます。しかし、他にも相続人(配偶者や別居の子など)がいて、かつ、預貯金などの金融資産がそれほど多くないときにどのように遺産配分をするかは頭を悩ませます。
 なお、このようなケースでは、建物は自分(遺言者)の所有ではありませんので、自分亡きあとの配偶者の住処が心配でも配偶者居住権の遺贈は使えません。

【遺産配分の方法】

 遺言による遺産配分の方法としては、いくつかのやり方が考えられます。具体事例を基に検討してみます。(個人情報保護のため、事例はアレンジしています)

《事例》

遺言者男性A妻Bと共に長女Cの夫が建てた2世帯住宅に居住(同居:A、B、C、Cの家族)
推定相続人妻B(同居)、長女C(同居)、二女D(別居) 
財 産土地  2,000万円(固定資産税評価額)預貯金 300万円

《案①~④》
案①:
長女Cに全財産を相続させ、妻Bと二女Dに代償金(遺留分以上)を支払わせる。

案②:
長女に全財産を相続させ、妻Bのお世話を終生みさせる(負担付き)。二女Dに対して代償金(遺留分以上)を支払わせる。

案③:
妻Bに全財産を相続させ、長女C及び二女Dに対して代償金(遺留分以上)を支払わせる。

案④:
土地を長女Cに相続させ、預貯金を妻Bと二女Dに相続させる。

《検討》
(1)代償金算定がスムーズにできるよう不動産の評価方法(固定資産税評価額あるいは路線価による評価額など)も指定しておきます。
(2)案③は、妻Bが高齢の場合、間もなく二次相続がやってくるかもしれません。妻Bの遺言も検討した方がよいでしょう。
(3)案④は、相続開始時に預貯金が底をついているかもしれません。
(4)不動産に比べて、預貯金が少ないので遺産配分に苦労しますが、不動産を共有させることは避けた方がよいでしょう。不動産を共有にしてしまうと共有者全員の合意がないと売却などの処分ができません。また、相続の度に権利者が増えていく恐れがあります。

【葬儀費用】

 生命保険の死亡保険金について、配偶者などを受取人に指定し、葬儀費用に充てるよう遺言に記載しているのを見かけます。一つのやり方ではありますが、死亡保険金請求権は相続財産ではなく、受取人の固有の請求権であることから、遺言の本文に記載したとしても使途の指定に法的効力を持たせることには無理があるでしょう。受取人が異論がなければ問題ありません。

【予備的遺言】

 不動産を承継する予定の長女Bが遺言者より先に死亡する場合に備えて、予備的遺言も検討しておいた方がよいでしょう。事例では、長女の配偶者に不動産(土地)を遺贈するという方法もあるでしょう。

【遺留分に留意】

 遺産の配分方法を問わず、遺留分には配慮した方がよいでしょう。付言事項に家族への感謝や思い(恨みつらみなどは書かない)を述べ、遺産配分の理由を記載し、相続人が受け入れやすいように配慮します。

 各家庭の事情は様々ですので、上記を踏まえて専門家に相談し、自分の家族に適した遺言にするとよいでしょう。

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