自宅不動産以外にめぼしい財産がない場合の遺言

 年金暮らしのご高齢者で、預貯金などの金融資産がほとんどなく、相続財産は現在居住している自宅のみというケースがあります。無料相談会などでもこのようなご高齢者から遺言についてご相談をお受けすることがあります。
 このようなケースにおける遺言書の書き方(遺産配分)については、いくつかの方法が考えられます。

【遺言者(被相続人)が一人暮らしの場合】
 遺言者が一人暮らしの場合は、自宅不動産を売却するやり方、代償金方式などを検討します。
(1)自宅不動産の売却・換金
 自宅不動産を売却・換金し、相続人に分配するというやり方です。空き家対策にもなります。
(2)代償金方式
 自宅不動産を相続人のひとりに相続させ、その相続人に他の相続人へ代償金を支払わせるというやり方です。先祖から受け継いだ不動産であるため、あるいは、苦労してローンを組んで購入した不動産のため、売却したくないという相談者もいらっしゃいます。ただし、代償金の支払能力の問題は残ります。
 この場合、士業など専門家を遺言執行者を指定しても、代償金支払いの部分は執行対象外とならざるを得ません。

【遺言者(被相続人)に同居者がいる場合】
 遺言者に妻、子など同居者がいる場合は、自宅不動産を売却するわけにはいきません。
(1)代償金方式
 自宅不動産を同居者に相続させ、他の相続人へ代償金を支払わせます。代償金の支払能力の問題は残ります。この場合、士業など専門家を遺言執行者を指定しても、代償金支払いの部分は執行対象外とならざるを得ません。
 なお、代償金の支払いは遺留分侵害額請求がなされないようにするための配慮であり、必須というわけではありません。

(2)配偶者居住権の遺贈
 同居の配偶者以外の相続人が前妻の子という場合は、その子から遺留分侵害額請求がなされる可能性もあるでしょう。配偶者が亡くなるまで自宅不動産に居住できるよう配偶者居住権を遺贈するのも有効です。

【空き家特例】
 上記の売却換金方式をとった場合は、譲渡所得税の課税対象となりますが、 遺言者(被相続人)が一人暮らしだった場合は、相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができます。
(注) 令和6年1月1日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。
 なお、マンションは対象外です。
 詳細は、国税庁のHPをご覧ください。

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