空き家問題-なぜ空き家は増え続けるのか?

現在、空き家の増加が社会問題となっており、国や自治体も様々な対策を講じていますが、まだ十分な効果が出ているとは言い難い状況です。そもそも空き家はどうして増えてしまい、今も増え続けているのでしょうか?調べてみると実に様々な事情、理由があることが分かります。
【空き家とは】
空き家とは、文字通り人の住んでいない空き家ですが、賃貸用や売却用物件、二次的住宅(普段住んでいる家とは別に所有する住宅のことで、別荘や投資用マンションなど)は、管理が問題とならないことから、ここでいう空き家には含めないことにします。
【空き家が増える理由】
ここでは、空き家が増加理由について、体系的な分類をせずに羅列してみました。
<人口の減少>
戦後日本は、住宅不足解消のため、すごい勢いで住宅を建設してきました。しかし、現在、日本の人口は減少しており、これからも減少傾向が続くため、必然的に空き家が増えます。
<高齢化>
2階建ての戸建てに居住している高齢者は、やがて2階に上がれなくなり、その家を去ることが多くなります。
<単身世帯の増加>
単身世帯が増加していますが、単身世帯の住人が去るとその家は空き家になります。
<住宅市場と業界>
日本人は新築志向が強く、中古住宅の流通は全体の約15%と言われています。住宅、マンション業界も新規開発・販売に力を入れており、新築志向を加速しています。ちなみに欧米では、中古住宅が住宅流通市場全体に占める割合は、国にもよりますが7~9割だそうです。
<相続税対策の勧め>
富裕層にとって、現預金等より不動産にした方が相続税評価が下がり、借入金も控除できるため、業者の勧めもあって賃貸アパートやマンションが次々と建設されます。
<宅建業者の報酬規制>
空き家になるような物件は価格が低く、労力に見合う仲介手数料が受け取れないことから、そのような物件を扱わない傾向があります。最近では、法改正により仲介手数料が引き上げられてはいると聞いていますが、まだまだ十分とは言えないようです。
<遺言で相続分のみを指定>
建物所有者が遺言で相続分のみを指定したため、不動産が相続人の共有となり、売却がスムーズにいかず、塩漬け状態のまま管理不全空き家になるケースもあるようです。私は無料相談会などでは、必ず特定遺贈または特定財産承継遺言を勧めるようにしています。
<遺産分割協議>
不動産以外にめぼしい遺産がなく、あるいは、様々な事情で相続人の協議がまとまらず、共有にしてしまうケースも少なくありません。また、成年後見人が本人の法定代理人として参加する遺産分割協議では、法定相続分確保のため、また、家庭裁判所の目もあり、共有にせざるを得ないケースが多々あります。
こうしてみると、空き家問題は様々な要因があり、一朝一夕には解決しない問題だと分かりますが、せめて遺言の手当てや遺産分割協議などでは後々のことを考えて工夫をしたいものです。