特別受益の価格はいつの時点で評価する?-相続開始時が原則

【特別受益の評価時期】
 前回、特別受益は、相続人間の公平を図るしくみだと説明しましたが、贈与で受けた特別受益の額はいつの時点を基準に評価すべきかという問題があります。例えば、20年前にマイホーム建築のため親から当時3,000万円の土地の贈与を受けましたが、地価が高騰し相続開始時は4,000万円になっているような場合です。反対に価格が下がっている場合もあるでしょう。

【原則は相続開始時】
 家庭裁判所の審判例の多くは相続開始時を基準に特別受益額を評価しており、学説の多くも同じように考えています。

【金銭は?】
 生前贈与が金銭でなされた場合はどうでしょうか?例えば、30年前の200万円と現在の200万円では価値が大きく異なります。この場合も判例は、相続開始時の価値に置き換えて評価すべきとしています。

【特別受益財産が現存しないとき】
 生前贈与された土地家屋などが事故や災害、売却などで現存しない場合は、次のように扱います。

(1)不可抗力による場合
 現存しない理由が天災など不可抗力による場合は、贈与がなかったものとして扱います。受贈者にとって酷な結果になるからです。
(2)故意、過失による場合
 不動産の売却、火の不始末による火災などが原因の場合は、贈与財産が現存するものとして扱います。

【他の制度の期間と混同しないで】
 特別受益の持戻しにあたっては、贈与時期について期間制限はありません。この点、遺留分や相続税に出てくる期間と混同しやすいので気をつけましょう。無料相談会などでお話を伺っていると混同している方が結構いらっしゃいます。

(1)遺留分
 遺留分を算定するための財産の価額を算定する場合、「贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、その価額を算入する、また、相続人に対する贈与については直近十年のものを算入する」、となっていますが、これはあくまで遺留分の話です。 

(2)相続税における贈与価格の加算
 相続または遺贈におり相続財産を取得した方が、その相続開始前7年以内(改正前は3年以内)にその相続に係る被相続人から暦年課税による贈与により財産を取得したことがある場合には、その贈与により取得した財産の価格を相続税の課税価格に加算することとされています。これもあくまで相続税のお話です。 

 特別受益の評価時期については、相続開始時が原則ですが、相続人全員が同意するなら贈与時や他の時点の価格でも構いません。評価時期は大事ですが、遺産分割協議がまとまるよう互譲の精神で臨むことが肝心です。

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