成年後見人は身元保証人等になれますか?

【はじめに】
行政書士でつくる成年後見人の団体で電話相談を受けていると、団体や所属行政書士にて身元引受人や身元保証人を引き受けてくれるか、という問い合わせをしばしば頂きます。医療機関や高齢者施設に入院・入居する際に身元引受人等が必要になることが多いのも問い合わせの多い理由です。
結論から言うと、団体も行政書士も身元引受人等になることはできません。しかし、成年後見人を立てることでお問い合わせ頂いた方の目的の大半を達成できる場合もあります。
【身元引受人・身元保証人とは】
一般的に「保証人」は、支払い債務を保証する人を、「身元引受人」は本人に何かあったときの手続きをする人を指しますが、医療機関や高齢者施設に入院・入居する際にの身元保証人・身元引受人には明確な定義はありません。入院治療費や施設入居費などの支払い債務の連帯保証をしたり、身柄や荷物の引き取りをすることを担う人を保証人・身元引受人としているケースが多いようです。
【成年後見人の行う事務】
成年後見人の事務は、以下のようなものです。大きく財産管理に関する事務と身上監護に関する事務に分けられます。身元保証人等になることは、下記(2)①②に含まれそうにも見えますが、これは成年後見人の事務には含まれません。
もし保証人等になった場合、保証義務が生じたときには本人に対する求償権が発生することが予め明白であり、それは利益相反行為となってしまうからです。
(1) 財産管理に関する事務
①財産の現状を維持
②財産の性質を変えない範囲で利用し、改良する
③財産を処分する
(具体例)
印鑑・通帳・証券等保管管理、年金・賃料等収入の受領管理、施設利用料・介護費用・医療費・入院費・家賃・公共料金・税金・保険料等の支払、家屋の増改築・補修、遺産分割の協議等相続に関する事項・・・
(2)身上保護に関する事務
①介護契約、施設入所契約の締結および解除
②入院、医療契約の締結および解除
③住居の確保、教育、リハビリに関する事項
④在宅や施設での生活の配慮、相手方の履行の監視(見守り)
【成年後見人がいれば】
行政書士は、身元保証人等にはなれませんが、上記の身上保護に関する事務を行うことから、身元引受人に近い業務を行うことになります。
また、死後事務については成年後見人の職務ではありませんが、執り行う親族がいなければ、家庭裁判所の許可を得て火葬、弁済期が到来した債務の弁済、債務を弁済するための預貯金(成年被後見人名義口座)の払戻しを行うことができます。
【民間企業・団体】
身元保証人等の業務を有償で引き受けている民間企業・団体も数多くありますので、必要な場合には検討してみるとよいでしょう。

