外国人の遺言-どこの国の法律に従うべきか

【外国人の遺言】
 在日外国人の場合、どこの国の法律に従うべきかという準拠法の問題がありますが、遺言については、①方式の問題と②遺言の成立及び効力について確認する必要があります。

【方式の問題】
 これは、必ず書面で作成する必要があるか、口頭やビデオ録画等でも良いか、証人の立会いを要するか、未成年者が遺言できるかなどの問題です。
 これについては、遺言の方式の準拠法に関する法律2条 一・三・四号により、日本に滞在する外国人は、日本に住所を有する場 合はもとより、旅行等で一時的に日本に滞在している場合であっても、日本法の規定する方式による遺言をすることができることとなっています。

【遺言の成立及び効力の問題】
 これは、遺言能力、遺言の意思表示の瑕疵、 遺言の効力発生時期、遺言の撤回の可否などの問題です。これについては、法の適用に関する通則法(以下、「通則法」といいます。)37条1項で、 遺言の成立当時における遺言者の本国法によることになります。(ただし、下記の「反致」を参照)

【遺言によってされた法律行為の問題】
 遺言によってされた法律行為、すなわち相続ないし遺贈の成立及び効力、 具体的には遺言による相続人や相続分の指定の可否、遺言による財産の自由処分の可否といった問題は相続 (通則法36条)の問題として、被相続人の本国法によることとなります。(ただし、下記の「反致」を参照)

【反致】
 ここで、反致という重要な考え方(きまり)があります。
 通則法41条は、「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」と定めています。例えば、遺言の成立及び効力の問題について、日本に住所を有する外国人である遺言者(被相続人)の本国法を適用すべき場 合において、その本国の国際私法の規則がこれらの問題について遺言者の住所地法を適用すべきものと定めている場合には、通則法41条の規定による反致が成立し、住所地法である日本法を適用すべきことになります。

【諸外国の反致の規則】
 諸外国の反致の規則は、次のようになっており、日本法が適用される場面が多くなっています。

①欧州連合の国々

ドイツ、フランス、オランダ、イタリア、スペイン等
相続については 被相続人の死亡時の住所地法により、遺言の実質的有効性について遺言者の遺言時の住所地法によるべき のとされている。したがって、これらの国籍を有す る外国人が日本に住所を有していて、日本で遺言を作成する場合には、通則法41条により反致が成立し、遺言の成立及び効力、相続につき日本法が適用されるため、本国法を調査、適用する必要はない。

②英米法系の国々

アメリカ、イギリス等
法定相続及び遺言の実質的要件(能力、解釈等)は、動産(預貯金を含む。) については被相続人の死亡時の住所地法、不動産についてはその不動産の所在地法によることとされている(相続分割主義)。したがって、 これらの国籍を有する外国人が日本に住所を有していれば、預貯金等を含む動産を遺言によって処分するとき、また、日本にある不動産を遺言により処分するときは、いずれも遺言の成立及び効力並びに相続につき 反致が成立し、日本法が適用される。

③中国

中国
不動産の法定相続についてはその所在地法によるもの、それ以外の財産(預貯金等を含む動産)については被相続人死亡時の住所地法によるもの、遺 言の効力については遺言時又は死亡時の遺言者の住所 地法又は本国法によるものとされている(中華人民 共和国渉外民事関係法律適用法31条、33条)。したがって、中国国籍を有する者が、日本に住所を有しており、預貯金等を含む動産を遺言により処分するとき、また、日本に住所を有しており、日本にある不動産を遺言により処分するときは、遺言の成立及び効力並びに相続の問題につき反致が成立し、日本法を適用することになる。

④韓国

韓国
被相続人が遺言に適用される方法によって住所地法を相続準拠法として指定したとき、また は同じく不動産の相続についてその所在地法を相続準拠 法として指定したときは、その法によるとされている (韓国国際私法49条、50条)。したがって、韓国国籍を有する人が、その遺言の中で相続準拠法として住所地 法である日本法を指定したとき、または日本にある不動 産の相続に関して所在地法である日本法を指定したときは、相続の問題について反致が成立し、日本法を適用することができる。
相続・遺言・終活の無料相談会 6月 ユニコムプラザ ボーノ相模大野 | さがみはら南区 | タウンニュース

「家族に感謝される遺言書とは?」「自宅が祖父名義のまま、どうすれば?」「おひとり様で心配」などの疑問・心配・要望に応える相談会が6月1日(日)、6日(金)、22…

シェアする