遺言書代わりに「配偶者を養子に」- どういうこと?

以前、知人を介して、養子縁組のご相談を受けたことがありました。相談者は70代後半の男性で、数年前に死別した妻との間に子はなく、兄弟姉妹が数名いらっしゃるとのこと。20歳以上離れた女性と同居しており、その女性と婚姻ではなく、養子縁組をしたいと考えているとのことでした。
【法定相続分 - 子がいれば兄弟姉妹は相続人とならない】
話をよく聞くと、相談者は、よき話し相手であり、献身的に身の回りの世話をしてくれるその女性に感謝しており、遺産は全て女性に譲りたいと考えているが、ある士業の方から、それならば養女にすればよい、と言われたというのです。
つまり、こういうことです。推定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、法定相続分はそれぞれ3/4、1/4となるが、子がいれば兄弟姉妹は相続人とならないので、その女性に全財産を譲りたいなら、婚姻届けを出して配偶者にするより、養女にした方がよい。遺言書を書く必要もなく、手っ取り早いというわけです。
確かに言われてみれば、その通りなのですが、何となく倫理上すっきりしない点も残りました。
【熟慮・検討すべき点】
上記のようなやり方も実際に行われているようですが、熟慮ないし検討すべき点がいくつか思い浮かびます。次のような点です。
①そのパートナーに他意はないか、自分の相続開始(死亡)まで円満でいられるか
②認知症等で介護が必要になっても変わらない関係でいられるか(介護保険制度を利用しても介護の現実は厳しい)
③兄弟姉妹との関係に配慮する
④元気なうちに同時に信頼できる専門職業人、団体と生前事務委任契約・任意後見契約・死後事務委任契約(※)を締結しておく
など
(※)任意後見契約等には停止条件を付すことになります
最終的にどうするかは、本人に任せるほかありませんが、上記のようなアドバイスをさせて頂いたと記憶しています。