成年後見-配偶者や子の生活費や教育費は本人財産から支払ってよい?

成年後見人等が本人の財産から支出を行う際の裁量については、親族後見人等であれ、専門職後見人等であれ、判断に悩むケースが少なくありません。
【扶養義務がある場合】
本人に一定の収入(年金、賃料など)や財産(不動産、有価証券、預貯金など)があるものの、配偶者や未成年の子に収入がないといった場合には、その生活費や教育費についても、本人の財産から支出することができます。これは、本人に配偶者や子に対する扶養義務があるためです。
一方、以下のようなケースでは、より慎重な検討が必要です。
【高額な支出】
本人が十分な判断能力を有していた場合と比較し、扶養能力や扶養義務の範囲・程度については慎重に考慮する必要があります。配偶者や未成年の子であっても、マンションや高価な自動車などを買い与えたり、海外旅行の費用を支出したりすることは、扶養の限度を超えるものと考えられます。
【成人の子の教育費】
成人の子の教育費であっても、大学や専修学校などの学費等については、本人に十分な判断能力があった場合に支出するケースは十分に考えられます。その支出が、本人の中長期的な身上保護に影響を与えないかなど、本人の収入や財産との関係で相対的に判断せざるを得ないこともあるでしょう。
これに対し、成人の子の生活費は、原則として扶養義務がないため、生活に困窮していたとしても、より慎重に判断する必要があります。
【孫の教育費】
本人は、孫に対して一次的な扶養義務を負いません。そのため、孫の教育費の負担を求められても、慎重に検討せざるを得ません。
しかし、子の収入や財産状況から、従前より本人が孫の教育費を負担しており、本人に十分な収入・財産があるといったケースでは、相対的な判断となることもあるでしょう。
【家庭裁判所への照会】
家庭裁判所から成年後見人等の業務に関するQ&A集が公表されていますが、それを参照しても判断に悩む場合は、家庭裁判所へ照会(FAXまたは郵送)することができます。その際、後見人等自身の見解や関連資料の提出を求められることがあります。
家庭裁判所も多忙であるため、「どうしたらよいでしょうか?」といった漠然とした質問では、回答が得られにくかったり、回答に時間を要することが多いようです。具体的な状況と、後見人等自身の検討内容を明確に伝えることが、スムーズな回答を得るための鍵となります。