遺言代用信託と遺言による信託はどう違いますか?

《遺言代用信託と遺言による信託の違い》
 遺言代用信託は、委託者(父親など)が死亡した際に受益者(母親など)が受益権を取得したり、財産を受け取ることを内容とする信託のことです。これに対し、遺言による信託は遺言によって信託を設定することをいいます。前者は、信託の目的・機能からの分類であり、後者とは次元が違います。

《遺言代用信託》
 遺言代用信託では、委託者(父親など)が、自分の死亡後の財産の承継先を受益者(母親、子など)として指定します。委託者の死亡後は、受託者が信託契約に基づいて、受益者に財産を引き継ぎます。

【遺言代用信託のメリット】
(1)遺言同様の機能
遺言と同じように、財産の承継先を自分の意思で指定できます。
②同じく、信託財産については遺産分割協議を行う必要がありません。

(2)柔軟な財産管理
 受託者に財産の管理・運用を任せられるので、遺言よりも柔軟な財産管理が可能です。

(3)認知症対策
 親の認知症に備えるなら、信託を選択するとよいでしょう。信託財産を施設や医療などの費用に充てることができます。アパート経営を親に代わって行うこともできます。

(4)その他

【遺言との相違点】
(1)契約と単独行為
 遺言代用信託は委託者・受託者間の契約であるのに対し、遺言は単独行為です。

(2)個別に信託財産を指定
 遺言代用信託では、信託財産を個別に指定するため、遺言のように相続財産漏れに備えた「その他一切の財産は〇〇に相続させる」という記載はできません

(3)付言
 遺言代用信託は、遺言と違って契約であり、付言は記載できません。

 など

【留意事項】
(1)家族会議
 上記の通り、遺言代用信託は、契約で遺言同様の機能を備えさせることから、信託の目的を始め、契約推定相続人を含めた家族でよく話し合いましょう。

(2)専門家に相談
 信託スキーム設計上、税制を含めた専門知識が欠かせないため、専門家に相談しましょう。

(3)上記【遺言との相違点】(2)の通り、信託財産以外の相続財産については、遺言がないと遺産分割協議が必要になります。法律上、信託が可能でも手続き上、難しい場合もありますので、その場合は遺言の併用を検討すべきでしょう。

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