家族信託-信託財産は相続財産とはならない!

《家族信託の性質の一端》

 家族信託では、信託財産はいったん受託者の所有となりますが、受託者の固有財産にはなりません。一方、委託者の相続財産からは消えてしまいます。したがって、遺言や遺産分割の対象とはなりません。

《事例》

 上記内容をご理解いただくため、次の事例で説明します。

 関係者:父親A、長男B、長女C (B、C以外に推定相続人はいないものとします)
 財産:金融資産3,000万円

【信託契約の内容】
 信託の目的:将来、父親Aの認知症に備え、介護・医療費用、その他生活費用等を確保する
 委託者兼受益者:父親A
 受託者:長男B
 残余財産の帰属権利者:長男B、長女C 
 帰属割合:法定相続割合
 信託の目的財産:上記金融資産3,000万円

 父親A死亡時、残余金融資産が2,000万円であった場合、長女Cは相続放棄しても、1,000万円を受け取れます。相続放棄の効果は、信託の残余財産まで及ばないからです。
 実際には、長女Cが相続放棄するようなことはないと思いますが、本事例は上記「家族信託の性質」の一端を端的に表しています。
 信託の残余財産は、相続財産とならないものの遺言同様、遺留分侵害額請求の対象となりますので、留意が必要です。

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