遺産分割協議で遺産を受取らないときはどうする?
遺産分割協議において、相続人が何かの事情により、相続財産を受け取らないということがあります。例えば、A:被相続人の借金がプラスの財産を上回る場合やB:被相続人が父親の場合に子が母親に全財産を相続させたいときなどです。
財産を受け取らない方法には、「相続放棄」と「辞退」があります。

《相続放棄》
上記Aのようなケースは、相続放棄を家庭裁判所に申し立てます。私が以前保険会社で求償債権回収業務に従事していたとき、放棄はしばしばありました。例えば、被相続人である父親が保険契約者の車に追突し、修理費相当額の損害を与えたとします。父親が修理費を資力不足など(任意保険未加入など)で支払わない場合に、保険会社は保険契約者の保険金請求に基づき、修理費相当の保険金を支払います(車両保険の先行払い)。保険会社は、保険金支払いにより追突された保険契約者が父親に対して有していた損害賠償請求権を代位取得し、父親に求償権を行使します。父親が既に亡くなっていれば、保険会社はその法定相続人へ請求するというわけです。
《放棄の留意点》
上記Bのようなケースで相続放棄を選択すると思いも寄らない結果になることがあるので注意が必要です。例えば、父親に兄弟姉妹がいる場合、子の放棄により父親の兄弟姉妹の相続順位が繰り上がり、母親とともに相続人になってしまいます。(父親の尊属が死亡しているものとします) そうすると母親と父親の兄弟姉妹で遺産分割協議が必要になってしまいます。
《辞退》
上記Bのケースでは、相続放棄ではなく、辞退をすべきです。辞退は遺産分割協議によって行います。子が辞退するときは、「母親がすべて相続する旨」の遺産分割協議書を作成します。母親だけでなく子の署名・捺印も必要です。念のため(蒸し返し防止の意味で)、加えて辞退の文言を記載するとよいでしょう。
《辞退の文例》
「相続人乙は、本相続にあたり自己の相続分の全部を辞退することを表明した」など。
《辞退の留意点》
相続放棄と異なり、被相続人の債務は、辞退した相続人も法定相続割合によって承継します。辞退は、あくまで相続人間の合意であって、債権者を拘束することはできないからです。従って、債権者は、辞退文言の有無に関わらず、辞退した相続人に対しても請求できますので注意してください。
以上のとおり、相続放棄と辞退では、選択する場面や手続きが違いますので、状況にあった方法を選択する必要があります。 当事務所では、遺産分割協議書の作成をサポートしています。遺産分割協議書を誰とどのように作成したらよいか分からない、事前に確認すべき事項や留意点が分からないなど、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。⇒お問い合わせ

