夫婦交差型遺言とは?気を付けることは?

《夫婦交差型遺言とは》
夫婦交差型遺言とは、夫婦がお互いに遺言を残し、配偶者が亡くなった場合に財産を相互に遺贈する形式の遺言のことです。法律上の用語ではありません。これにより、最初に亡くなった配偶者の財産はすべて生存する配偶者に相続され、その後に生存する配偶者が亡くなった場合に、残された財産が指定された相続人に渡るようにすることができます。
《夫婦交差型遺言で気を付けること》
夫婦交差型遺言で気を付けることを何点かあげてみます。
1.予備的遺言が必須
夫婦がお互いに遺贈する訳ですが、必ず夫婦どちらかが先に亡くなり(同時死亡もない訳ではありませんが)、遺贈相手がいないという事態が発生するため、予備的遺言が必須となります(配偶者が亡くなったら、必ず遺言書を書き替えるという場合は必須とは言えませんが)。女性の平均寿命が長いことから、予備的遺言は妻だけが記載すればよいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、病気や不慮の事故が起こらないとも限りませんので、夫も記載するようにしましょう。
2.流れ込み財産について記載する
「流れ込み財産」とは、遺言時点では有していなかった財産のことです。配偶者から相続した財産には限られませんが、典型的なのは妻が夫から相続した自宅不動産などです。全財産を遺贈するとした場合、通常、相続開始時点で遺言者の有するすべての財産が対象と考えられますが、疑義を生じさせない記載にしておくとよいです。
3.葬儀・埋葬・法要について記載(検討)する
子のいない夫婦の場合、葬儀・埋葬・法要をしてくれる人を確保しておいた方がいいでしょう。
(1)菩提寺や甥姪等に遺贈と共に葬儀・埋葬・法要を依頼する
(2)遺言ではありませんが、死後事務委任契約を締結しておく甥姪等の場合は、法要まで含むのか、含むとして何回忌までやってもらうのかを事前に合意しておいた方がよいでしょう。
このように遺言書の作成には、時間と手間が掛かりますので、早めに検討を開始することが大切です。
《流れ込み財産についての記載例》
以下は、流れ込み財産についての記載例です。
1.遺言書の冒頭に記載するケース
「遺言者は、現在および将来において取得する一切の財産を、遺言者の妻〇〇(生年月日)に相続させる。」
2.遺言書の予備的遺言に記載するケース
「遺言者は、前記〇〇が遺言者の死亡以前に死亡したときは、前各条に基づき前記〇〇に相続させるとした財産(前記〇〇から相続した財産を含む)を△△(住所、生年月日)に遺贈する。」
以上、ご参考になれば幸いです。