遺言執行上の留意点 ―「遺言書に記載のないことはしない」
遺言執行にあたり、遺言書に記載されていることは忠実に執行する必要がありますが、書かれていないことはやらないよう注意が必要です。書かれていないことまでやることは、相続人や受遺者に遺言執行者の業務範囲を誤解させ、あるいは期待を抱かせ、トラブルにつながることがあります。

《遺言書に記載されていない事項、あるいは、やりがちな行為の例》
《遺言書に記載されていない事項、あるいは、やりがちな行為の例》
以下のような事項、行為が挙げられます。
(1)相続債権の取立・回収
(2)相続債務の弁済(※1)
(3)遺言書に記載のない相続財産についての遺産分割協議の調整(※2)
(4)相続人間の遺留分の調整
(5)相続人間の争いごとの仲裁
(6)生命保険・障害疾病定額保険の保険金請求手続き(※3)
(7)遺族年金の手続き
(※1)遺言で遺言執行者の権限として明記されている場合や換価清算型遺言の場合には、弁済の権限があります。
(※2)「その他一切の財産は、〇〇に相続させる(遺贈する)」旨の文言がない場合です。事前に相続人全員対し、遺言執行業務の範囲外であることを説明しておくとよいでしょう。
なお、別途、相続人と委託契約を交わして行うことは可能ですが、弁護士法72条に抵触しないよう注意が必要です。
(※3)別途、保険金請求権者(保険金受取人に指定されている者。指定がない場合は相続人が受取人となることが多い)と委託契約を交わして行うことは可能です。