遺言で生命保険金の受取人を変更できますか?

《結論》

 平成22年4月1日以降に締結された生命保険契約については、遺言による保険金受取人の変更が可能です(保険法第44条1項)。ただし、後で説明しますが受取人によっては変更できないこともありますので、注意が必要です。

 

《どんな場合が想定されるのか》

 生命保険金の受取人は、保険契約者に行為能力がある限り、保険会社に申し出ることで、生存中に変更できます。わざわざ遺言で受取人を変更する場合としては、以下のようなケースが想定されます。
①受取人の変更を秘密にしておきたい事情がある場合
②受取人が遺言者より先に死亡する場合に備えて、予備的に受取人を決めておきたい場合。予備的遺言ですが、受取人変更の一種と言えます。
③死後事務委任契約などで生命保険金を執行費用・報酬に充てる場合
など

《遺言による受取人変更の留意点》

①保険会社への通知
 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者(保険会社のことです)に対抗することができない(保険法第44条2項)とされています。指定受取人が保険金を受領する前に通知しないと保険会社は二重払いはしてくれません。遺言執行者は上記通知義務を履行できますので、指定しておいた方がよいでしょう。

②保険約款の事前確認
 保険金受取人の変更を制限する保険約款がある場合にはその保険約款が優先することになります。例えば、受取人の変更の範囲を被保険者の2親等以内の親族までに制限している場合、遺言で受取人を親族以外の者に変更したとしても保険会社がその変更に応じないことになるので、注意を要します。事前に保険約款を確認するなり、保険会社に問い合わせしておきましょう。

《その他の生命保険金に関する知識》

 上記の他に遺言、相続がらみで生命保険金に関して、以下のような点を押さえておきたいところです。

①生命保険金は相続財産とはならない
 生命保険金は、保険事故(被保険者の死亡)の発生により保険 会社から保険金受取人に支払われるものですので、被保険者の相続財産とはなりません。通常、保険契約時に保険金受取人を指定します。

②生命保険金はみなし相続財産となる
 上記①のとおり、生命保険金は被保険者の相続財産とはなりませんが、相続税の関係ではみなし相続財産となり、相続税の対象となります。

③生命保険受取人が死亡した場合の受取人
 受取人に指定された者が死亡した場合、死亡した受取人の相続人が受取人となります

④死亡した保険金受取人の相続人が2人以上のときの受取割合
 各相続人は、法定相続分の割合ではなく、平等の割合で保険金給付請求権を取得します(分割債権とするのが判例)。
 ただし、生命保険金の受取人を「相続人」としている場合には、 各保険金受取人の有する保険給付請求権の割合は法定相続分の 割合になると解されています(判例)。

 以上、ご参考になれば幸いです。

シェアする