遺言書有無の確認方法について-相続が開始した場合
遺言書確認の重要性
相続が開始した場合、遺言書があればその内容に従って、遺産を配分します。遺産分割協議をした後で遺言書が発見されると相続人間でトラブルになることがありますので、遺言書の有無を確認することが大切です。もっとも、遺言があっても相続分の指定にとどまったり、遺産の一部についての遺言である場合は、具体的な分割方法やその他の遺産の承継について遺産分割協議が必要です。
公正証書遺言の確認方法

平成元年以降に作成された公正証書遺言については、全国の公証役場において、遺言公正証書の有無および保管公証役場を検索することができます。遺言検索の申出は、無料です。
しかし、遺言検索の申出は、秘密保持のため、相続人等の利害関係人(例えば、法定相続人、受遺者、遺言執行者など)しかできません。申出の際の必要書類は、①遺言者が死亡した事実を証明する書類(除籍謄本等)、②遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本、③申出人の本人確認の書類(マイナンバーカード、運転免許証等の顔写真付き公的身分証明書または実印および印鑑登録証明書<発行後3か月以内のもの>)です。
法務局の保管制度を活用した自筆証書遺言の確認方法

2020年7月10日から遺言書保管制度が開始され、法務局で自筆証書遺言を安全に保管できるようになりた。この保管制度を利用することにより、遺言書の紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。
<2種類の証明書>
全国の遺言書保管所において、遺言書保管事実証明書の交付の請求をし、特定の遺言者の、自分を相続人や受遺者等又は遺言執行者等とする遺言書が保管されているか否かの確認ができます。保管されている場合は、相続人等は、遺言書情報証明書の交付の請求をし、遺言書保管所に保管されている遺言書の内容の証明書を取得することができます。
<交付の請求ができる者>
遺言書保管事実証明書 | 誰でも請求できますが、遺言書が保管されていても、請求人が相続人、受遺者等又は遺言執行者等でない場合、「保管されていない」旨の証明書が交付されます。また、任意代理人による請求は出来ません。 |
遺言書情報証明書 | 相続人、受遺者等、遺言執行者等、これらの者の親権者や成年後見人等の法定代理人。任意代理人による請求は出来ません。 |
<交付の請求に必要な書類>
遺言書保管事実証明書 | 1.交付請求書 2.添付書類 ①遺言者の死亡の事実を確認できる戸籍(除籍)謄本 ②請求人の住民票の写し ③相続人が請求する場合は、遺言者の相続人であることを確認できる戸籍謄本 ④法人が請求する場合は、法人の代表者事項証明書(作成後3カ月以内) ⑤法定代理人が請求する場合は、戸籍謄本(親権者)や登記事項証明書(後見人)(作成後3カ月以内) ⑥顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証等) ⑦手数料 1通につき800円 |
遺言書情報証明書 | 1.交付請求書 2.添付書類 ①法定相続情報一覧図の写し(住所記載のあるもの) 又は次の②③④すべて ②遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍)謄本 ③相続人全員の戸籍謄本(遺言者の死亡日以後作成のもの) ④相続人全員の住民票の写し 上記の①~④に加えて、請求人に応じて以下の⑤~⑦の書類も必要 ⑤受遺者等、遺言執行者等が請求する場合は、請求人の住民票の写し ⑥法人が請求する場合は、法人の代表者事項証明書(作成後3カ月以内) ⑦法定代理人が請求する場合は、戸籍謄本(親権者)や登記事項証明書(後見人)(作成後3カ月以内) ㋒顔写真付きの官公署から発行された身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証等) ㋓手数料 1通につき1,400円 |
(遺言書情報証明書の交付請求に上記添付書類①~④の添付が必要な理由)
相続人等のうち誰か一人が、遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人等全員に対して、遺言者が遺言書保管所に保管されている旨の通知をするためです。抜け駆け的な相続人の行為を防止し、公平・適正な相続手続きの実現に資するようこの通知制度が設けられています。
保管制度を利用しない自筆証書遺言の確認方法
公正証書遺言や自筆証書遺言保管制度のような検索・証明書交付制度がないので、遺言書が保管されていそうな場所を探すほかありません。
1.自宅
書斎の引出し、タンス、押し入れ、金庫、仏壇など
2.施設
入居していていた施設の家財道具など
3.貸金庫
貸金庫の開扉・内容物取出しには、相続人全員の署名・押印を求められることがあります。
4.被相続人の親しかった友人・知人・親族
被相続人から預かっていないか確認します。