秘密証書遺言についてもっと詳しく教えて!

秘密証書遺言は、「秘密」という響きから、遺言をするならこれだと思われる方がいらっしゃるかもしれません。この遺言は遺言方式の一つで、公正証書遺言と同じく公証役場で二人以上の証人立会の元で作成しますが、公証人や証人が遺言書の内容を確認しない点や遺言書原本が公証役場に保管されない等大きな違いがあります。
《秘密証書遺言の手順》
秘密証書遺言の作成手順は、次の通りです。
1.遺言書の作成と封印
遺言者が自ら又は第三者が記載した遺言証書に署名押印し、それを封筒に入れ、封をした上で証書に用いた印で封印する。
(ポイント)
①遺言本文を自書する必要はありません。
②日付を記載する必要はありません。
2.封紙の貼付
上記1.の封印された封筒に公証人が封紙を貼付する。
封紙には、遺言証書が提出された日付及び遺言者の申述(それが自己の遺言であること、第三者によって書かれているときはその筆者の氏名及び住所)が記載され、その封紙に二人以上の証人、遺言者、公証人がそれぞれ署名押印する。
(ポイント)
①公証人と証人は、遺言内容を見ることができません。これが、「秘密」とされる所以なのでしょう。
②遺言書原本は、公証役場に保管されません。
《秘密証書遺言のメリット》
手数料は、財産額や承継先(相続させる人の数や遺贈先の数)にかかわらず、一律11,000円です。
《秘密証書遺言のデメリット》
①公証人のチェックを受けないため、方式違背等で遺言が無効になる恐れがあります。
②遺言執行のためには、家庭裁判所に検認の申立をしなければなりません。
③遺言書を遺言者本人が保管するため、紛失しても公証役場に謄本を請求することができません。
公正証書遺言は、公証人及び証人が遺言内容を見ることになりますが、守秘義務が課せられおり、「秘密」の点で遜色はありません。また、上記メリデメからすると、秘密証書遺言は法務局の保管制度を利用しない自筆証書遺言と大差ないようにも感じます。
現在のところ、秘密証書遺言の依頼を受けたことはありませんが、相続業務30年のベテラン行政書士の先生から1件のみ受任したことがあるとお聞きしたことがあります。秘密証書遺言を検討する際には、上記のメリデメ等をよく踏まえて判断する必要があると言えます。