永住権は取り消されることになるのですか?

一般に「永住権」と言われているのは、「永住者」の在留資格を持った方の法的地位です。ここでは、入管法の改正による在留資格の取消しに関する変更点を説明します。改正の目的は、永住許可制度の適正化にあるとされています。
[現行法上の取消事由]
実は、現行法上も、在留資格「永住者」について、次のような取消事由が定められています。
(1)新住居地の届出をしなかった場合や虚偽の住居地を届けた場合
(2)不正の手段等により永住許可を受けた場合
(3)1年を超える実刑に処せられた場合
(4)薬物事犯により有罪判決を受けた場合
など。(3)(4)は、退去強制の対象となります。
[追加される取消事由]
(1)改正入管法第22条の4第1項第8号「この法律に規定する義務を遵守せず」
これは、退去強制事由として規定されている義務ではありませんが、義務の遵守が罰則により担保されているものについて、正当な理由なく履行しないことです。永住許可制度の適正化は、一部の悪質な者を対象とするものとされており、うっかり、在留カードを携帯しなかったり、在留カードの有効期間内に更新申請しなかったような場合などは、取消しは想定されていません。
(2)改正入管法第22条の4第1項第8号「故意に公租公課の支払をしないこと」
「公租公課」とは、租税のほか、社会保険料などの公的負担金のことです。「故意に」とは、支払能力があるのに支払わない場合などが想定されています。したがって、病気や失業など、やむを得ない場合にまで取消し対象となることはないとされています。実際には、不払いに至った経緯や督促等に対する永住者の対応状況などを勘案し、個別に判断すると説明されています。
(3)改正入管法第22条の4第1項第9号に規定する刑罰法令違反
刑法の窃盗、詐欺、恐喝、殺人の罪などや自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律の危険運転致罪など、一定の重大な刑罰法令違反です。交通事故を起こして過失運転致死罪の罪で処罰された場合は、本号の対象とはなりません。また、道路交通法は、取消事由として規定された刑罰法令には含まれません。
[職権による在留資格の変更]
取消事由に該当しても、直ちに在留資格を取り消されて出国させられるのではなく、悪質な場合を除き、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格への変更を許可することとしています。多くの場合、「定住者」の在留資格が付与されるものと考えられます。こちらをご覧ください。⇒永住許可制度の適正化について
[改正法の施行日]
改正法は、一部の規定を除き、公布の日(令和6年6月21日)から起算して3年以内に施行されます。
在留資格「永住者」の改正に関しては、出入国在留管理庁よりQ&Aが出ています。詳しく知りたい方はご覧ください。