どう変わる?自筆証書遺言!-保管証書遺言の創設等

NEW!2026年07月20日テーマ:遺言

1.法改正の背景・必要性

 令和8年6月、「民法等の一部を改正する法律」が公布され、遺言制度が大きく見直されることになりました。今回の改正の背景には、高齢化の進展や単独世帯の増加など、社会や家族のあり方の変化があります。また、相続登記の義務化を受け、所有者不明土地問題の解決という社会的要請からも、遺言の重要性はこれまで以上に高まっています。
 さらに、近年はパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器が広く普及し、「手書き」を前提とする現行の自筆証書遺言が時代に合わなくなってきました。全文を自筆で作成しなければならないことが大きな負担となり、遺言を作成したくても踏み切れない方も少なくありませんでした。今回の法改正は、このような課題を解決し、より利用しやすい遺言制度へと見直すことを目的としています。

2.普通の方式の遺言の見直し

 今回の改正で最も注目されるのが、新たに「保管証書遺言」が創設されることです。これは、パソコンなどで作成した遺言データや、その印刷物を法務局に提出し、本人が遺言書保管官の前で遺言内容を口述することなどにより、法務局が遺言を保管する新しい制度です。
 この制度では、オンラインで保管申請ができるほか、一定の場合にはウェブ会議を利用した手続も認められます。また、法務局で保管されるため、紛失や改ざんのおそれが少なく、相続開始後は家庭裁判所での検認手続も不要となります。さらに、遺言者が指定した方へ遺言の存在を通知する仕組みも設けられ、遺言の発見漏れを防ぎ、円滑な相続手続につながることが期待されています。
 なお、現在の自筆証書遺言制度や遺言書保管制度が廃止されるわけではなく、新たな選択肢が追加される形となります。

3.特別の方式の遺言の見直し

 死亡が差し迫った状況などで利用される「特別の方式の遺言」についても、デジタル化への対応が図られます。
死亡危急時遺言では、これまで証人3人以上の立会いが必要でしたが、新たに録音・録画を利用し、証人1人以上(ウェブ会議による立会いも可能)で作成できる方式が追加されます。また、パソコン等で作成したデータを遺言として利用することも可能になります。
 さらに、船舶遭難者遺言についても見直されます。対象となる場面に、大規模地震などの「天災その他避けることのできない事変」が追加されるほか、録音・録画を利用した新しい方式や、メール等で送信することにより証人の立会いを不要とする方式も新設されます。災害時など現代社会に即した制度へと改められる点が特徴です。

4.遺言制度における押印要件の見直し

 これまで自筆証書遺言や秘密証書遺言などでは、遺言者や証人の押印が法律上必要とされていました。しかし、近年は行政手続や民間取引でも押印の見直しが進み、公正証書遺言についても令和5年の法改正で押印が不要となっています。
 こうした社会の変化を踏まえ、今回の改正では、自筆証書遺言、秘密証書遺言、特別の方式の遺言における押印は任意となります。遺言書の加除・訂正の際の押印も同様です。もちろん、署名など遺言の真正性を確保するための要件は引き続き必要ですが、押印がなくても直ちに無効になることはなくなり、遺言作成のハードルが下がることになります。

5.証人等の欠格事由の拡張

 遺言の公正性を確保するため、証人になれない人(欠格事由)も見直されます。
 これまでも受遺者(遺言によって財産を受け取る人)は証人になることができませんでしたが、近年では高齢者施設や介護事業者などへ遺贈するケースも増えています。このため、改正後は受遺者だけでなく、その従業員や、受遺者が法人である場合の役員・従業員も証人になることができなくなります。利益相反のおそれをより適切に防止するための改正といえるでしょう。

6.新法の施行日

 今回の改正は、一斉に施行されるわけではありません。
 押印要件の見直しや特別の方式の遺言の改正は、公布日(令和8年6月24日)から1年以内に施行されます。一方、新設される保管証書遺言制度は、システム整備などを要するため、公布から3年以内に施行される予定です。制度ごとに施行時期が異なるため、今後の政令による具体的な施行日の公表にも注目したいところです。

7.困った時は行政書士にご相談を

 遺言制度は、今回の改正によってデジタル化や手続の簡素化が進み、これまでより利用しやすくなります。しかし、「どの方式を選べばよいのか」「自分の場合はどのような内容にすればよいのか」と迷われる方も多いでしょう。
 遺言は、一度作成すれば終わりではなく、ご家族の状況や財産内容の変化に応じて見直すことも大切です。また、法律の要件を満たしていなければ、せっかく作成した遺言が無効となる可能性もあります。
 相続をめぐるトラブルを防ぎ、ご自身の意思を確実に実現するためにも、遺言の作成をお考えの際は、お気軽に行政書士へご相談ください。お一人おひとりのご事情に合わせて、適切な遺言書作成をサポートいたします。

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