「特定財産承継遺言」というのがよく分かりません。
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【特定財産承継遺言とは】
遺産の分割方法の指定として、特定の財産を共同相続人の一人または数人に承継させる旨の遺言のことをいいます。(民法第1014条第2項) 例えば、「自宅の土地・建物を〇〇に相続させる」、「A銀行のa支店の預金を××に相続させる」、「株式は△△に相続させる、などの遺言です。
【遺贈との違い】
「特定財産承継遺言(いわゆる遺産分割方法の指定)」と「遺贈」は、いずれも「特定の財産を特定の誰かに取得させる」という結果は同じですが、誰に対して、どのような法的効果を及ぼすかという点で異なります。また、相続手続きの進め方や、受遺者・相続人の負担に実益の違いがあります。
1.法的性質の違い
(1)遺贈(民法第964条〜)
性質: 遺言者から受遺者への「贈与」に近い性質です。
対象: 相続人以外の人にも可能ですし、もちろん相続人に遺贈することも可能です。
意思表示: 遺贈は、受遺者が「遺贈を放棄する」ことができます(民法第986条)。受遺者が遺贈を放棄すれば、その財産は相続人全員の共有に戻るか、遺言の内容によって別の行き先が決まります。配偶者居住権は、特定財産承継遺言ではなく、遺贈によることになっています。(民法第1028条1項2号)
(2)特定財産承継遺言(民法第1014条第2項)
性質: あくまで「相続」の一種です。遺言者が「この財産はAに相続させる」と指定するものです。
対象: 相続人にしか使えません。(※相続人以外に与える場合は必然的に「遺贈」になります)
意思表示: 相続放棄の手続きとは別個に、単独でこの財産だけを拒否することは原則できません。

2.手続き上の実益の違い
(1)登記手続きの簡便さ
特定財産承継遺言: 「相続させる」と書かれた場合、受遺者(指定された相続人)が単独で登記申請が可能です。
遺贈: 遺言執行者がいる場合を除き、「遺贈による移転登記」は、原則として「権利者(受遺者)」と「義務者(相続人全員)」が共同で申請する必要があります(不動産登記法第63条)。 相続人全員の協力が必要となると、遺産分割に協力的な相続人がいない場合、手続きが極めて困難になります。ただし、「遺言執行者を指定」しておけば、遺言執行者が「義務者」として単独で登記ができるため、遺贈であっても共同申請の不都合を解消できます。
なお、令和5年4月1日から、遺贈により不動産を取得した相続人は、単独で相続登記の申請ができるようになりました。
⇒遺贈によるよる所有権移転登記/相続人に対する遺贈編
(2)登記の登録免許税(税負担)
特定財産承継遺言: 不動産の固定資産税評価額の 0.4%。
遺贈:受遺者が相続人の場合: 0.4%(相続と同率)。
受遺者が相続人以外の場合: 2.0%(贈与と同率)。相続人以外への遺贈(特定遺贈)は、登記の登録免許税が5倍になります。
(3)債権(預貯金)の解約・払戻し
特定財産承継遺言: 指定された相続人が、単独で金融機関に解約を申し出ることが可能です(民法899条の2の改正により、遺言による指定があれば、払い戻しが容易になりました)。
遺贈: 遺言執行者がいれば、執行者が速やかに解約・払い戻しを進められます。
【「全部相続させる」は相続分の指定】
例えば、「全財産を妻〇〇に相続させる」と書くと、特定財産承継遺言ではなく、相続分の指定となり、民法第1014条2項、3項に規定する遺言執行者の権限(相続登記等の対抗要件の具備、預貯金の払戻し請求・解約の申し入れ)が使用できない懸念があります。そのため、全財産を妻に相続させる場合でも、特定の財産ごとに妻に相続させると列挙し、最後に列挙されていない一切の財産も妻に相続させる、とします。
遺言をする際は、遺言方式、推定相続人の確認、特定財産承継遺言か遺贈か、予備的遺言の検討、遺留分への配慮など考慮すべき事項が多岐に渡ります。安心・円満な遺言を遺すなら、専門の行政書士に是非ご相談ください。
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