内縁の妻(夫)への遺言で気を付けることは?

 遺言で相続財産を承継させたい相手は、相続人である場合もあれば、内縁の妻のように相続人でない場合、あるいは両方である場合等様々なケースがあります。今回は、内縁の妻(夫)に遺言で財産を残す際に注意すべき点について、簡単な事例を挙げて説明します。

《事例》

推定相続人内縁の妻A、先妻の子B、C、D
財   産自宅不動産、預金①、預金②、預金③、預金④
遺言内容自宅不動産と預金①を内縁の妻Aへ、預金②~④をそれぞれ子B、C、Dに承継させる

ポイント①【遺贈にする】
 内縁の妻に財産を承継させるときは、「自宅不動産と預金①を妻に遺贈する」と記載します。内縁の妻には相続権がないからです。子に対しては、「相続させる」とします。このとき、妻への遺贈は特定遺贈となり、相続債務は、相続人たる子B、C、Dが相続することになるため、住宅ローンの残債がある場合等は注意が必要です。 
 なお、通常、財産の記載漏れ防止のため、「この遺言書に記載のない財産については、〇〇に相続させる(遺贈する)」と記載します。

ポイント②【遺言執行者の指定】
 遺贈の対象の中に不動産がある場合は、所有権移転登記手続きがスムーズにいくように遺言執行者を指定しておきます。内縁の妻Aを指定しても構いません。所有権移転登記は、登記権利者を内縁の妻A、登記義務者を子B、C、Dとする共同申請となり、これらの者全員の印鑑登録証明書が必要です。つまり、登記手続き上、相続人全員の協力が必要になりますが、遺言内容をよしと思わない相続人が出てこないとも限りません。この点、遺言執行者を定めておけば、遺言執行者の権限で登記申請をすることができるのです。 

ポイント③【遺言執行の復任権】
 遺言執行者が身体的、精神的、能力的に自ら遺言執行することが困難な場合に備えて、遺言執行を弁護士、司法書士、税理士、行政書士等の法律専門職に委任できるよう復任権を与えておきます。 

 他にも留意すべき点は多々ありますが、まずは上記3点を押さえておきましょう。

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