負担付遺贈の負担を履行しない場合は?-遺言の取消し

 受遺者に一定の法律上の義務を負担させる負担付遺贈において、負担付受遺者が負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行の催告をすることができ、その期間内に履行がないときは、その負担付遺贈に係る遺言の取消しを家庭裁判所に請求することができます。
 例えば、妻の世話を終生みることを負担として、長男に大半の財産を遺贈したようなケースです。負担付遺贈が取り消されると、受遺者は不当利得として遺贈の目的を返還しなければなりません。

《負担付の特定財産承継遺言の場合》
 特定財産承継遺言に負担が付されていた場合、受益相続人は、他の相続人に対して負担の履行をすべき義務を負うと解されますが、負担付遺贈に準じて、特定財産承継遺言の取消しを家庭裁判所に請求できるかどうかは争いがあり、確定した判例がありません。
 遺贈に準じて取消しを認めてもよさそうですが、負担付の遺言をするときは、念のため遺贈で行った方が確実かもしれません。

《遺産分割協議の約束が守られない場合》
 なお、いったん、遺産分割協議が成立した場合、相続人の一人が当該協議において負担した債務(例えば、遺産を多くもらった長男が終生、残された親の面倒を見る)を履行しないときであっても、その債権を有する相続人(例えば、上記の親)は、民法541条により遺産分割協議を解除することはできないとするのが判例です。

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