監理措置制度とは-収容せずに退去強制手続きを進める制度

《監理措置制度とは》
監理措置制度は、一定の要件を満たす場合に監理人の監理の下、逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり、社会内での生活を許容しながら退去強制手続を進める制度です。2023年の入管法改正により新設され、2024年6月10日から施行されました。
「退去強制手続」
退去強制手続は、不法残留者や一定の刑罰に処せられた者など我が国の公序と安全にとって好ましくない外国人(国外への退去を相当とする外国人)を強制的に国外に退去させる手続きです。退去強制手続きは、入国審査官による認定⇒特別審理官による判定⇒法務大臣による裁決の三審制となっています。
《監理措置制度創設の背景》
以前は、退去強制手続は全件収容主義ではあるものの、運用上は大半が仮放免などで収容されず、しかも、仮放免後の逃亡が後を絶たなかったことや全件収容主義自体が人道上問題視されてきました。
そこで、逃亡等を防止するための手段(監理人の選任他)を備えた収容代替措置として、監理措置制度が創設されるに至ったわけです。
《監理措置の要件》
本人の請求又は職権により、監理措置が決定されますが、その要件は次の2つです。
(1)監理人が選任できること
(2)主任審査官が、監理措置決定を受けようとする外国人が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により受ける不利益の程度その他の事情を総合的に考慮して、収容しないで退去強制手続を行うこと(退去強制令書発付前)又は送還可能のときまで収容しないこと(退去強制令書発付後)を相当と認めることです。
なお、退去強制令書発布前の監理措置中は、在留特別許可申請が可能で、生活維持の範囲内で就労が認められる場合があります。退去強制令書発布後は、国外退去が確定しているため、どちらも認められません。
《監理人》
監理人は、次の3つの要件を満たしている者から選定されます。
(1)監理人の責務を理解していること
(2) 監理措置決定を受けようとする外国人の監理人となることを承諾していること
(3)任務遂行の能力を考慮して、監理措置決定を受けようとする外国人の監理人として適当と認められること
監理人は、典型的には、本人の親族や知人など本人に身近な人が想定されていますが、これらの者に限らず、例えば、行政書士、弁護士、支援者、登録支援機関の職員なども就任できます。
《被監理者の責務》
被監理者は、次の事項を遵守する必要があります。
(1)監理措置決定通知書の携帯・提示義務
(2)監理措置条件の遵守
(3)定期的な届出義務の履行
《監理措置決定の取消》
監理措置決定は、監理措置条件に違反したときなど一定の事由に該当したときは、取り消されます。